マヌカの季節が終わり、ジャラの森が目覚める
西オーストラリア州で、春の気配が初夏へとほどけていく頃。私たちのマヌカシーズンは、静かに幕を下ろします。
マヌカは、短い期間にぎゅっと集中して咲く花。開花のピークは一般に冬の終わりから初春にかけてで、花が散り始めると、蜜の流れも驚くほど早く落ち着いていきます。ミツバチはとても効率よく蜜を集めるため、マヌカの花が終わり、蜜源が薄くなると——それは「季節が変わった」という合図です。
それは決して、環境が悪くなったという意味ではありません。自然が、次の章へとページをめくっただけ。ここから養蜂家の仕事は、「蜂を、より豊かな場所へつなぐ」ことへ移っていきます。
ジャラの季節へ
マヌカが落ち着くと、今度は西オーストラリア州のジャラの森が目覚めはじめます。
ジャラは毎年必ず咲く花ではありません。2〜3年に一度、ときにはそれ以上の間隔をあけて、ようやく訪れる開花。それだけに、シーズンが巡ってきた年の森は特別です。例年は12月から1月にかけて蕾が開き、豊かで新鮮な蜜の流れが始まります。
巣箱の移動は、夜に行われる“静かな大仕事”
巣箱の移動は、思いつきでできる作業ではありません。花の見込み、水源へのアクセス、人の干渉の少なさ——いくつもの条件を重ね合わせ、場所は事前に丁寧に選定されます。
そして移動は、コロニーが落ち着く夜。養蜂責任者は、採蜜に出ていた蜂たちがきちんと巣へ戻るのを待ち、巣箱を固定し、トラックへ積み込みます。運ばれていく先は、清らかなジャラの森の奥深くにある、新しい養蜂場。蜂たちのリズムを乱さないよう、慎重に、静かに運ばれていきます。
森に設置された巣箱で、蜂たちは数日かけて新しい環境に慣れ、その後いよいよ本格的な採蜜が始まります。
真夏には、蜂たちはすっかりジャラの環境に馴染みます。森の足元は生命の気配に満ち、樹冠の上からは蜜の気配が漂う。そうして蜂たちは、西オーストラリア州でもとりわけ希少で、豊かな“活性”が期待されるはちみつのひとつを集め始めます。

マヌカからジャラへ——季節に従うことは、蜂の健やかさにつながる
季節の移り変わりに合わせて蜜源を追うことは、はちみつづくりのためだけではありません。ミツバチ自身が常に自然な食料源に出会えるようにすること——それがコロニーの健やかさを支えます。
開花のサイクルに従い、その土地のリズムと調和しながら採蜜する。私たちが目指すのは、無理をしない、土地に根ざした、持続可能なはちみつです。
マヌカとジャラの違いは?
マヌカとジャラは、どちらも西オーストラリア州を代表する活性度の高いハチミツです。ただし、その個性を読み解く鍵は同じではありません。評価の指標が違うからこそ、味わいも、楽しみ方も変わってきます。
マヌカ:MGOで読み解く
マヌカハニーは MGO(メチルグリオキサール) のレベルで語られることが多いはちみつです。MGOは、マヌカの蜜に自然に含まれるDHAが、熟成の過程で変化することで形成される成分として知られています。
一般に MGOの数値が高いほど、活性の強さを示す指標のひとつになる とされています。
ジャラ:TAで読み解く
一方、ジャラハニーはMGOだけに依存しません。ジャラの“強さ”は、より広い視点で捉えられる TA(Total Activity) という指標で語られます。
TAは、過酸化物由来の活性と、非過酸化物由来の活性の両方を含めて評価する考え方で、はちみつ全体の特性を総合的に見ていく指標です。
ジャラは、その独自の天然成分と、西オーストラリア州の清らかな開花サイクルにより、高いTA値が得られることが多い といわれています。

風味・質感の違い
マヌカ:濃厚でクリーミー。薬草を思わせるようなニュアンスと、力強く土を感じる余韻。
ジャラ:より深い色合いで、なめらかな舌触り。キャラメルのようなコクがあり、日々の一匙に寄り添う味わい。
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